秘め恋

 ユミがマサにイクトとの同盟関係をほのめかしたのは、マサに同情してのことだった。いつまでも過去のことで友達に攻撃され続けるマサが不憫だったし、かつての自分を見ているようでいたたまれなかったのだ。

 ユミも似たようなことで同性の友達から逆恨みされたことがある。ユミは何もしていないのだが、その魅力ゆえ無自覚に友達の彼氏を誘惑していたらしい。それが原因で何人かの女友達を失い、噂を聞きつけた一部の女子達から軽い嫌がらせを受けた。

 そういった事情から女の友達は極力作らないでおこうと思っていたが、大学でイクトと知り合うと彼を通して性別問わず多くの友達ができた。イクトに寄ってくるのは明るく優しい学生ばかりで、ユミの容姿をやっかむ女もいなかった。

 そうして再び同性の友達と過ごす楽しみを体験できた。イクトのおかげだとユミは思った。

 はじめはイクトに恋愛感情などなかったが、大学で顔を合わるうちにだんだん好きになっていった。告白するかどうか迷っていたある日、イクトがかつての親友マサを恨んでいると打ち明けてきた。先輩宅で行われたサークルでの飲み会でのことだった。

 先輩達のノリに合わせていたら未成年だということも忘れてけっこうな量の酒を飲んでしまった。そのうち他のメンバーが眠ってしまい、起きているのはユミとイクトだけになる。

 酔っていたイクトは、ただ一人起きていたユミにポソリポツリと語った。

「同じことしてアイツを傷つけてやりたい。まあ、無理って分かってるけどな。マサとは大学も離れたし」

「無理じゃないでしょ。仲直りしたがってるフリしてその人の彼女に探り入れればいいじゃん。で、奪っちゃえば? いればの話だけど。力貸すよ」

「いい案だな。でもユミには関係ないだろ。一人で何とかする」

「ううん。恩返しさせてよ。今学校楽しいのイクトのおかげだし」

 そこから二人は協力し合い、今に至る。
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