秘め恋

 ユミが出て行ってから三十分以上が経った。彼女に頼まれた品はとっくに届き、アオイとイクトは彼女を待ちつつも食事を終えようとしていた。

「遅くない? やっぱり見に行った方がいいよ」

 アオイはさっきから何度目かになる言葉をイクトにかけた。そのたびイクトの答えも決まっていた。

「大丈夫だよ。今行ったら逆に入れ違いになりそうだしここで待とう」

 そう言われてしまうとアオイは何も言えなくなった。早く三人で昼食をすませてマサを探しに行きたい。それが素直な気持ちだった。

 正直まだマサに対して思うところはある。けれど、このままギクシャクしてしまうのは避けたい。食事を摂ることで動揺も少しずつ落ち着いてきた。

 私はマサの友達で、バイト先の店長なんだよ。こんなことでマサを避けるなんてダメだ。ちゃんと向き合わないと……!

 本当は怖い気持ちもある。マサが遊び人だったなんて知りたくなかった。全く軽蔑しなかったと言えば嘘になる。けれど、今自分が知っているマサを元に判断したいとも思う。

 だってマサは、私が玲奈にしたことを受け入れてくれた。あんな人めったにいない。それに、本人が自覚しているよりずっと優しい人だ……。

 人に話したら責められそうな過去を、マサは普通に聞いてくれた。それは、彼がアオイにたいして興味がなかったからだとも受け取れるが、それでもその時アオイの気持ちは救われたように感じた。

 もちろんそれで全てが許されるとは思わないが、それでも、ありのままを受け入れられる心地よさに触れ、自分に自信が持てた。もし今マサが困っているなら、今度は自分が助けてあげたい。
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