秘め恋

 せっかく仲良くなれそうだったユミともう会えないのは残念だが、それ以上にアオイはマサと楽しい時間が過ごせれば何でもいいと思った。

「さ。引き続き楽しも! マサはまずご飯だよね。何食べたい? 焼きそばとかもおいしそうだよね〜」

 明るく仕切り直すアオイに、マサは気まずげに尋ねた。

「さっきのこと、気にしてないの?」

「何だっけ?」

 アオイはわざととぼけた。

「俺の過去のこと。店長も、チャラいバイト雇ったの嫌かなって。なんならクビにしてもいいよ」

 平然とした口調とは違い、マサの表情は悲しげに曇っている。バイトをクビになってもいいだなんて本心のわけがない。アオイはそう判断した。

「何言うかと思ったら、意外とネガティブな子だなーマサは」

 おちゃらけたように、アオイはマサの頬を両手で挟んで彼の顔をじっと見つめた。頬から伝わるアオイの体温に、マサの頬は瞬時に紅潮した。

「子供扱いやめてよっ。こっちは真面目に話してるのに!」

「こっちだって真面目だよー。そんなことでクビにしてたら労働基準法とかに引っかかるんですー。それに過去は過去って考え方なんでー。理解してくれましたー?」

 わざと敬語を使って茶目っ気を見せるアオイにマサの心は大きく揺さぶらる。
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