秘め恋
それはそうかもしれない。たった十八年の人生にもそれなりに隠したい出来事がしまってあるのだから、大人になるにつれそれは増えたり膨らんだりするのだろう。
アオイの言葉で、マサは深い安心感を覚えた。
「叩いて埃が出ない人なんていないってことか」
「うん」
「ありがと。言いにくいこと話してくれて」
「私こそ聞いてくれてありがとう。今ね、マサとますます仲良くなれた気がする。嬉しいな」
友達としての笑顔だ。分かっていても、隣に座るアオイがこちらへ向ける微笑みに特別な意味があったらいいのにと、マサは願った。
俺も、アオイと仲良くなれて嬉しい。
喜びと同時に切なさが増すものの、この時はまだそこまでこの恋を悲観的には感じなかった。それは、アオイから男の気配を感じなかったからだ。既婚者なので、こうしている間に旦那からのラインなり電話なりがきても不思議ではないのだがアオイにはそれがなかった。彼女が結婚しているという事実を頭だけで理解している状態で、正直実感が伴わない。それがある意味救いだった。
それからマサの食事をすませ、二人はシュノーケリングや遊泳を楽しんだ。あっという間に時間は過ぎて、夕焼けが砂浜を照らす頃、二人は帰り仕度を始めた。
「なんか早かったね、時間が過ぎるの。もっと遊んでたかったなぁ」
「海は無理でも、また今度アオイが行きたいとこに行こうよ。いつでも付き合うし」