秘め恋
その後二人は今日回った場所全てに足を運び目を皿のようにして探したが、虚しくもマサの予想通り指輪は見つからなかった。昼間食事をした店の店員や駐車場の警備員にも尋ねてみたが、それらしい落とし物はないと言われた。
これ以上探すアテが無くなってしまった時、すっかり日は落ちていた。
昼間はサンダルを履いていないと熱くて踏めなかった砂が、素足で踏むと生暖かく感じるほど体感温度と気温は下がっている。
とはいえ、はやり動き回ると汗ばんだし、時間的に空腹も覚える。
一日遊んだ後の捜索作業はさすがに疲れた。マサだけでなくアオイの顔にも疲労が浮かんでいる。しかし彼女は決して探すのをやめるとは言わなかった。
「ねえアオイ。いったん休も」
「そうだね」
さすがにもう、アオイも意地を張らなかった。
「ごめんねマサ、こんな時間まで。ありがとう」
スマートフォンが示す時間は二十三時をとうに過ぎていた。疲れるはずだ。もうすぐ日をまたいでしまう。
時間を知った途端、アオイは帰宅時間のことを気にし始めた。
旦那とは生活リズムがすれ違いめったに顔を合わさない暮らしとはいえ、今夜こそもしかしたら旦那が早く帰宅しているかもしれないと期待したのだろう。
しきりにスマートフォンを気にする彼女を見て、早く家に帰りたいのだろうとマサは思った。