秘め恋

 ショートヘアの外見も手伝って一見サバサバして見えるが、リオには妙に色気もあった。

 近くで見たら特に分かる。水で濡れたような自然な唇の艶に、マサも思わず目が釘付けになってしまった。

 そういうこと興味なさそうな顔してるけど、やっぱりイクトとはもうシてんのかな。シてんだろうなー。なんか嫌だな。想像したくない。

 リオの唇を流し見て真っ先にそんなことを考えてしまった。男なら誰だってそうだよねーと軽い調子で自分を擁護しつつ、親友の彼女にそんな目を向けてはいけないことも分かっていた。

 相談にはしっかり乗ろ。俺はイクトの幼なじみなんだから。それで彼女は頼ってきたんだから。それ以上でも以下でもない!

 懸命に健全な親友のフリをした。

「どこで話す? 相談ならイクトやイクトの知り合いとかに聞かれたくないよね?」

「じゃあ、マサ君ちでもいい?」

「え、俺んち!?」

 この子、その気のないフリして遠回しに誘ってる!?

 マサはそう思ってしまった。自分が欲求不満だから都合よく考えてしまうのかもしれないが、それにしても急に室内だなんて、リオのチョイスはおかしいと思う。

 単に恋愛相談なら別に部屋まで行く必要はない。ファーストフードやファミレスやカフェの禁煙席、密室がいいならカラオケで充分じゃないか。

 彼氏の親友相手とはいえ、よく知らない男の家に行きたがるなんて普通ではありえない。少なくとも、男の感覚から見たら素っ頓狂な提案だった。

 自室だなんて、完全にこちらのテリトリーになる。彼女にとっては身構えるシチュエーションではないのか。
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