秘め恋

「アオイ先にシャワーいいよ。俺少し横になっとくから」

「ありがと。じゃあ、先に入ってくるね。着替えってこれ?」

「そうそう。そこのバスローブ好きに使っていいよ」

「分かった。行ってきまーす」

 アオイの気配がバスルームの奥に消えたのを確認し、マサは背中からベッドにダイブして大の字になった。こんなことになって果たして大丈夫だろうか、平静を保てるだろうか、などと気を揉んだものの、意外と落ち着けている。これも、不本意とはいえ女性経験の賜物なのだろうか。慣れない運転で疲れているせいにしたいところだ。

 ううん。相手がアオイだからかな。

 本気で好きになった人に性欲を覚えないなんてのは嘘だ。一方で、それだけの対象にできないというのも本当だと今になって実感する。

 こんな気持ち、知らなかったな。体の関係がなくてもそばにいるだけで楽しいなんて。一年前の俺に言ったらどんな反応するんだろ。

 欲望のまま突っ走るタイプではなさそうな自分に安心しつつ、マサは次第に眠りの中に落ちていった。アオイがシャワーを終えたら次が自分が浴室に行こう。そう思いながら。今は少しだけ眠ろう。

「……サ。マサー? 寝ちゃった?」

 アオイの匂いだろうか。甘い湿気を含んだ香りが鼻をかすめた。しかしマサの意識はおぼろげで、彼女に名前を呼ばれたことすら分かっていない。アオイの気配だけは感じられるが、脳の大部分に睡魔が居座っている状態である。
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