秘め恋

 マサへの思いが気の迷いであることを証明したかった。

 数コール待った後、仁は電話に出た。

『もしもし。アオイ? どうしたの?』

「ごめん、仕事中だったよね」

『大丈夫。バイト達との海は楽しめた?』

 優しい声だった。付き合う前から変わらない。

「楽しかったよ。でも、仁に謝らなきゃいけないことがあって……」

『何? どうしたの?』

 仁は全く動揺することなく、落ち着いた穏やかな声音のままアオイの言葉を待った。そこにアオイは違和感を覚えた。

「指輪、失くしたんだ……。さっきまで探してたんだけど結局見つからなくて……」

『そうなの!? それは大変だったね。指輪はいいから、今度また新しいのを探しに行こう』

「大変だったねって。他人事みたいに言うんだね」

『そんなことないよ。アオイのこと、心配してる』

「…………」
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