秘め恋

「ごめんね。やっぱりダメだよね……?」

 リオは上目遣いにマサを見つめた。その視線はあざといほどに愛らしく、簡単にマサの理性を遠くにやってしまう効果があった。

 女の子らしく尖った顎に反し柔らかさを想像させる頬の曲線。遠目からは薄いと思っていた唇は間近で見るとぽってり赤く色づいている。心なしか目つきも艶めかしかった。

「別にいいよ。うちの親共働きで夜まで帰らないし」

 即答していた。あれこれ考えたのが無駄だったと言わんばかりに。

 リオを部屋に上げた時、彼女の体からかすかに甘い匂いがし、反射的にこれまで付き合った女子達のことを思い出した。親がいないのをいいことに、この部屋に何度女を連れ込んできたか。

 そんなことを繰り返していくうちにキスが上手いと言われるようになった。最近は女っ気が途切れそういうことを全くしていない。そのせいか、よけいリオのことを意識してしまう。

 可愛いけど、抱こうと思えば抱けるけど、むしろめちゃくちゃ好みのタイプだけど、この子はイクトの彼女だろ! ダメだって!!

 自分に言い聞かせ、リオの話に耳を傾ける。そういえば、こうして女子にじっくり恋愛相談されるのは初めてだった。

 変な想像をしてしまったものの、最初は真面目に相談を聞くだけのつもりでリオを部屋に通した。リオは物珍しそうにマサの自室を眺め、

「イクトんちは服とか本とか雑に散らばってることが多いんだよ。マサ君は部屋綺麗にしててすごいね」

 明るく室内の感想を漏らした後、しんみりした口調で本題を口にする。

「マサ君にだから正直に言うんだけど、最近、私達うまくいってないんだよねー……」

 私達。それは、イクトとリオを示していた。
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