秘め恋
朝を通り過ぎ昼を迎える頃、アオイはマサの腕の中で目を覚ました。抱きしめてほしいとお願いしてから彼は、眠っている間片時も腕を離さずにいてくれたらしい。わずかな罪悪感と共に深い安心感を覚える。
「私のこと、そんなに好きでいてくれてるんだね」
マサの髪をそっと撫でてみた。彼は気持ちよさそうに寝息を立てている。シャンプーやボディーソープとは別のいい匂いがした。
マサの香りだ……。
好きな匂いだ。旦那がいる身とは思えないほど、こうして男性と一緒に眠るのは久しぶりである。こうしてマサのそばにいると、仁の匂いを忘れかけている自分に気付く。
仁ってどんな匂いだったっけ……?
香りだけでなく、旦那の体温すら記憶から薄れかけている。マサの存在と温もりだけが心を満たした。
ずっと寂しかったけど、マサのおかげでだいぶ癒されたよ。甘え過ぎてたと思う。二度とこんなこと頼まないから。
「ごめんね」
バスローブを脱ぎ、昨夜シャワーの前に脱いだ下着と服を再び身につけ、眠っているマサを起こしてしまわないようそっと自分のバッグを手繰り寄せた。財布から一万円札を二枚抜き、宿泊費としてテーブルに置く。