秘め恋
「マサ、ありがとう。楽しかったよ。またバイトでね」
本人に聞こえていないのを承知で言葉を残しラブホテルを後にした。
金なら充分にあるので帰宅手段の心配はなかった。タクシーで帰ろうとしたら親友の真琴から着信があったので、自宅に戻るのは後回しにして彼女とランチに行く約束をした。
ラブホテルでシャワーを浴びたとはいえ服も下着も昨日と同じなので着替えに帰りたいような気もしたが、仁との電話を思い返すと家に足が向かなかった。
自宅から少し離れたファミリーレストランで真琴と落ち合う。タクシーで直接向かったものの、真琴の方が先に席に着いていた。到着するなり、彼女は手を振った。
「アオイー、こっちだよ〜」
低くも高くもないテンションと人好きのするソフトな真琴の声音に、アオイははち切れんばかりの安心感を得た。
「真琴〜! 会いたかったよぉ」
真琴のいるテーブル席につくなり、アオイは彼女に抱きつく。
「ご乱心だねぇ。さては、例のバイト君と一悶着ありましたな?」
「うん……。ちょっとね」
わざとおどけた話し方をするのは真琴なりの気遣いだと知っている。彼女の向かい側に座り、アオイはぽつぽつと昨日の出来事を話した。
「こんなこと真琴にしか話せないんだけど……。ホント私最低なんだけど……」