秘め恋
ただ話題にマサの名前が出るだけで胸が喜んでいるのが分かった。たとえ親友との会話でも積極的に口に出したらいけない名前なのに、どこかでこの流れを期待していた。
「最近さ、ツイッターで気になるものを見つけてね。見る?」
真琴は言い、制服のポケットから自分のスマートフォンを取り出した。
「あー。仕事中はスマホ禁止だよ」
「今日だけ見逃して? ほら、このアカウントなんだけど」
「もう。何?」
柔らかく咎めつつ、アオイは真琴の差し出したスマートフォンの画面を見た。真琴が言うツイッターユーザーのアイコンが抹茶ラテの画像に設定されている。この店の看板メニューのひとつだ。
とはいえ抹茶ラテを置いているカフェは多い。それでもこの店のものだと断定できたのは、パフや生クリームの盛り付け方にこだわっているからだ。他店との差別化を図りたいと考えた、アオイのオリジナルである。
「これうちの抹茶ラテだね。てことは、お客さんのアカウントかもしれないってこと?」
「だね。この人、プロフィールの一言欄に『イルレガーメファン』って書いてるし、間違いない」
il legame《イルレガーメ》。アオイが考えたこの店の名前だった。