秘め恋
ただまっすぐ、冷静な面持ちでそれだけ告げるアオイにイクトは気圧され、おずおず拳を差し出した。中には、海イベントで亡くしたアオイの結婚指輪が握られていた。
「ありがとう。あれからものすごく探し回ったの。大切な物だから見つかってすごく嬉しい。お礼にここは私に払わせてね」
「そんなの別にいいよ」
「そういうわけにいかない。これは結婚指輪なの」
「え!? け、結婚!?」
イクトは目を白黒させた。
「えっと、結婚って、マサと? 学生結婚? なくはないと思うけど周りにいないからビックリっていうか……。でも驚いた」
「ううん。相手はマサじゃないよ。マサとはただの仕事仲間。付き合ってないの。海の時は嘘ついてた。騙してごめんね」
「そうなの? 結婚してるのに、何でわざわざそんなこと……?」
「あの日、彼女のフリをすることでマサを守りたかった。店長として」
飲み物が運ばれてきた。アオイはそれをひと口だけ飲み、改めて言った。
「全ては二人の問題で、外野の私には口出す権利はない。それでも一つだけ言わせてほしい。イクト君とマサがこれ以上ぶつからずにいてくれたら私は嬉しい。私にとってマサは大事な従業員だから。お願いします」
「アオイちゃん……」