秘め恋
譲れない一線


 何やってんだろ、俺。

 バイト先とは別のカフェで、マサは小さくため息をついた。スマートフォンには自分のツイッターページが表示されている。

 バイトも休みで、特に予定もない暇な一日を、アオイにとってはライバル店ともなりうる他店で過ごすのには訳があった。

 海に向かう車の中で、アオイが言っていたのだ。カフェ巡りをするのが趣味だと。趣味の延長でその店の特色をチェックする職業病的な癖が悲しいと笑って話していた。

 それからというもの、アオイの人格の一部が心に貼り付いたかのようにマサを突き動かした。カフェ巡りなんて柄でもなかったし、昔デートで行くのも退屈だとさえ思った場所なのに、カフェに出向くという行為にアオイの影がちらつく、ただそれだけで心を幸せに染めた。

 そのついでというわけではないが、アオイの悩みを少しでも和らげることができたらいいと思い、ツイッターで店のクチコミを書いたりした。あまり連投すると関係者のステルスマーケティングだと言われかねないので、ツイートの回数は加減しながら。

 ん? 短期バイトとはいえ俺も一応あそこの従業員だし、ある種のステマ…?

 アオイには避けられているというのに彼女の店のクチコミを書いて集客数アップを狙うなんて、しょせん自己満足なのかもしれない。クチコミサイトならともかく、それもツイッターの裏アカウントを使ってするなんて。
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