秘め恋
二人はどちらかともなく鉄製の欄干に寄った。真琴は腹を、マサは背中から欄干にもたれた。
「この時間でも夏は暑いね~。昼間よりはマシだけど」
「太陽出てないだけで暑さ半減しますよね。真琴さんはお酒飲んだ後ってのもあるんでしょうけど」
「あー、酔うと暑くなるよね~。冬はそれがいいんだけど夏はね」
「大人ですね。俺にはまだよく分かりません。ビールとか美味しいと思えないし」
「あはは。そういえばマサ君まだ未成年だもんね。初々しいなぁ十八歳。私にもあったなぁ、そんな時代が」
「時代って。そんな昔の話でもないですよね」
「んーん。大きいよー、十八歳から二十三歳までの五年は……。価値観も感性も大きく揺れ動き変わっていく年月だから」
笑い合う二人の間に、必然のような沈黙が落ちた。ポトンと音まで立ったかのように。マサと真琴は同じことを考えた。そう、アオイのことを。
「真琴さんは店長の友達ですよね。なのにどうして俺のフォローまでするんですか? 偏見かもしれないけど、女の人って男より同性の友達の味方するイメージあるんで、意外というか、何というか……」
「もちろんアオイの味方だよ。だけどマサ君の敵になるつもりもない。アオイには幸せになってほしいんだ。ただ、それだけ」
「友達の幸せをそこまで願えるって、なんかすごいですね。友達いても、俺はそういうの感じたことないから」
「そうなんだね。私も、友達全員の幸せを願ってるわけじゃないよ」