秘め恋
噂に継ぐ二人の別れ。原因はマサ。
圧倒的多数派の前でマサをかばう者は出てこず、日頃から人望のあるイクトとリオが優先的に悪口から守られる形となった。
おまけに、噂の元となったリオはそれまでと変わらず平穏な学校生活を送り、優等生の顔をして孤立するマサに声をかけ続けた。私のせいでごめんねと謝りつつ、彼女はイクト以外の男に体を許したことを人前で否定し、一切認めなかった。
『私はイクトしか見てなかったよ。でも、イクトに誤解させた私が悪かったと思う』
最後まで、彼女は純情で一途な女を演じていた。巻き込んだマサに対しても、本当の意味で謝罪の言葉をかけることはなかった。
そのことに、マサはだんだん疑問を募らせた。
別にいいけどさ。俺にも下心があったし。相手は女の子なんだから力づくで拒否すればよかったのに、断るのももったいないなーって思っちゃったんだよ。だから別に、リオちゃんに謝ってほしいとかはないよ。
でもさ。裏切り行為を進んでやったのはリオちゃんも同じじゃん。なのになんで俺はハブられてリオちゃんは無傷なの? おかしくない?
身から出た錆(さび)。とはいえ、納得しているかというと微妙。
結局マサは、卒業式で写真を撮ろうと声をかけてきたリオをその時初めて無視し、帰路に着いた。リオにとってはさしてつらくもないだろうが、マサとしては精一杯の仕返しだった。
女子を無視するなんて精神的にきついことを自らやったのだ。もうこれ以上嫌なことが起こらないようにと願いながら、春の気配が漂う校舎を後にする。
リオとのことがなければ、今頃自分もクラスメイト達とわいわい写真を撮り合って高校生活を振り返り、切なくも別れの時を楽しめたのだろう。そう思うと悲しかった。
一人ぼっちで歩く最後の通学路。イクトとの絶交状態が続いているのが、何より痛かった。