秘め恋
真琴も、両親の不仲で幼少期から人知れず寂しい思いを抱えて生きてきた。アオイと仲良くなって彼女もそういう生い立ちだったと聞いた時、直感は当たったと思った。
「まあさ、そういう家庭はいくらでもあるよ。アオイと私んちだけじゃない。アオイとの出会いは偶然に偶然が重なった程度の、日本のどこにでも転がってる話なんだと思う。それでも私には貴重な出会いに感じたから、アオイが私に友情を感じてくれている限り、私も全力でアオイを大切にしたいと思ったんだ。運良く、今日まで縁は続いてる」
「運良く、って……」
真琴の発言が自虐的にも聞こえ、マサは思わず言葉を挟んだ。
「彼氏彼女と違って、友情ってそう簡単に壊れたりしないでしょ。裏切ったりしない限りは」
って、イクトを裏切った俺が言うのも滑稽かな。
真琴は寂しげに小さく笑った。
「残念なことに、裏切りだけが友情崩壊の原因とは限らないんだよ」
「そうなんですか?」
「噂。誤解。偏見。価値観の相違。色々あるよ。同性同士の交流も、ささいなことでボタンのかけ違いが起きる。摩擦が生じる。そしていつしか互いに苦しくなって離れてしまう」
「……何かあったんですか? アオイと出会う前に」
「あはは。そりゃあまあ。ひとつやふたつくらいはねー」
「訊かないでおきます……」
「そうしてくれると嬉しい」
真琴は余裕すら感じさせる笑みでマサを見つめた。
「アオイもね、心の奥深くに私と同じものを持ってる。人とつながれない寂しさ。孤独。そこから抜け出せないという諦め」
「でも、アオイには旦那がいますよね。今すごく順調そうですけど。あ、嫌味とかじゃなくて」
慌てて言葉尻を付け足すマサに、真琴は諭すように「分かるよ」と言った。