秘め恋
その上で思う。人とはそういうものかもしれないと。恋など知らなかった自分がアオイのことばかり考えてしまっているように、どれかひとつではなく、いくつもの異なる面が合わさって一人の人間が作られているのかもしれない。
「ざっくり言うと、アオイと俺の関係を応援してくれてるってことですよね」
「そういうこと」
「でも、アオイが何を求めてるか、決めるのは本人だから。今アオイが旦那を大事にすると決めたなら、俺の出る幕ないですよ」
「店長からアオイに変わってる」
「え?」
「呼び方。さっきまでは、アオイのこと店長って言ってた。まるで自制心を保つみたいに」
指摘され、マサは顔を真っ赤にさせた。真琴の前でくらい一バイトとして振る舞うつもりだったのに、いつの間にかプライベートな顔が出てきてしまった。
「すいませんっ。今の忘れて下さい」
「えー? いいと思うけどな。マサ君がアオイの名前呼ぶ時、愛しさが込められてた。個人的にはすごく萌えるよ」
「萌えって! からかわないで下さいよっ」
「あはは。ごめんね。酔っ払いの戯言だと思って流してー。ああー。今さらだけど、変なこといっぱいしゃべったかも」
「ここだけの話にしておきますよ。ま、酔っ払いのわりには流暢にしゃべってましたけどね」
「マサ君には敵わないね!」
本気か冗談か分からない口調で最後の言葉を飾り、真琴はフラフラと帰っていった。