秘め恋
「アオイも真琴さんも、分かりづらい……」
一人ごちる。彼女達の分かりづらさも、今のマサには快適な悩みのように感じられる。
分からないから知りたい。そう思うのも間違ってる?
今考えられる唯一の希望は、アオイの親友が後押ししてくれていることだった。それも、少し前の自分だったら喜べていたかもしれない。しかし、今はただただ複雑である。当のアオイからは避けられたままなのだから。
いっそのこと、はっきり嫌いだと言われれば楽になれるのに。いや、アオイの性格的にそれはないか。
どんな嫌な客に対してもスマイルと感じの良さを貫くアオイに、残酷な態度を望むのは酷というもの。やはり、自分から突き放すしかないのだろうか。旦那と幸せになれ。そう言って。
いやいや! そんな思ってもないこと言えないし!
頭の中は困惑に満ちていた。真琴の後押しがかえってマサを悩ませた。
アオイの家庭を壊さない程度の友情を彼女と育みつつ、ぼんやり片想いしていられたらそれでいい。その程度だった小さな気持ちが、今はもう、別のものに変わってきている。
本音を言うと、バイト先で顔を見るだけではもう満たされない。本当は彼女と食事に行きたい。同じものを口にして美味しいだのまずいだのと言い合いたい。出来ることなら一緒に綺麗な景色や映画を見て感想を語り合いたい。バイトとは別の枠でアオイの時間を独占したい。何もしなくてもいいから、自分のアパートに寄っていってたわいない会話をしていってほしい。仕事の後、旦那のいる家に帰ってほしくない。
「一緒にいても寂しいなら、そんな旦那切っちゃえばいいのに……」
本人には到底言えるわけのないセリフを吐いて、満たされない思いをごまかした。