秘め恋

 自分なりに現実を受け止めていたものの、仲の良かった相手に嫌われ続けるのはつらいものだ。

 もっときつかったのは、大学の仲間達と遊んで帰ってきて帰宅が遅くなった日に、イクトがマサの自宅アパート前で待ち伏せし、待ち構えていたかのようにこんなセリフを放った時だった。

『大学、楽しそうだな。よく平気な顔して過ごしてられるよなって思うけど。あんなことしといて。神経疑うわ』

 マサは何も言い返せなかった。黙り込んで時間が過ぎるのをひたすら待つばかり。そんな自分が情けなかった。イクトがまだリオのことを引きずっているのを肌で感じた。

 悪かったよ。どうしたら許してくれる?

 自分のせいだと分かっていても、かつて仲良くしていた友人にここまで冷たくされるのはけっこう傷つく。

 イクトをこんな風にしたのは俺だ……。

 でも、まだその状況でいた方がマシだったのかもしれない。ある意味それが〝普通〟なのだから。

 去年の夏リオと寝てから、イクトとは半年以上に渡る絶縁状態が続いていた。出先で顔を合わせればことごとく辛辣(しんらつ)なことを言われる。

 そんな関係に変化が起きたのは、アオイの店の面接を受ける前日のことだった。

 あの日は昼間から夜にかけて大学の友人宅でゼミの資料作りをしていて、帰りが深夜近くになってしまった。友人宅で少し眠ったものの頭はぼんやりしていたし、前日もあまり寝ていなかったので一刻も早くシャワーを浴び家で眠りたかった。

 その矢先、自宅アパート前にイクトが待ち構えていた。この前の待ち伏せの時、マサの実家に連絡してここの住所を聞いたと言う。
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