秘め恋

 マサはげんなりした。責められるのは慣れつつあったが、今日はイクトの攻撃をスルーできる自信がなかった。

 ホント今はカンベンして。何か言われたら逆ギレしちゃいそうだから。

 だが、それは杞憂に終わった。

 心なしかイクトの表情は明るい。そんな晴れ晴れした顔つきはリオの件があってから見ていない。

 やや安心していると、その理由がすぐに分かった。

「マサ。今までごめんな。終わったことを色々グチグチ言ったりして。ラインでもたくさん謝ってきてくれたのに、既読スルーの後にブロックしてた。アホだったよな俺。ホントごめん!!」

 マサは呆気に取られた。数日前まで仇に接するような言動のオンパレードだった幼なじみが、今はどういうわけか柔らかな物腰で頭を下げている。

 腰を深く折って反省するイクトの姿を見て、ようやく自分は許されたのだと思った。

 そこにいたのは、かつて仲良く交流していた親友そのものだった。

「いや、俺が悪かったんだし、イクトが色々言いたくなるの当たり前だから……。でも、どうして急に許してくれる気になったの?」

「できたんだよ。好、き、な、や、つ」

「ホント!? もしかして同じ大学の子?」

「ああ。さっき付き合うことになってさ。前の恋を忘れるには新しい恋って名言あるだろ。あれホントなんだな!」

「そっか。よかったな」

「てわけで、これからはお互いリオのことは忘れて、また前みたいに仲良くしてくれよな」

「もちろん! 俺もそうしたかったし!」
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