秘め恋
イクトとの友情が復活したことを心から喜んだ。しかし、喜びの中にほんの少しだけ猜疑心が生まれてしまったのも否めなかった。
あれだけ俺のこと嫌ってたのに、新しい彼女ができたからってリオちゃんのこと全て忘れて何事もなかったように振る舞えるもんか? 気にしすぎ……?
突然のイクトの変化に、正直気持ちがついていかなかった。喜ぶべきことだと思うのに、百パーセント喜びきれない。
器ちっさいかな俺。イクトは元々ああいうおおらかなヤツだし、一度許したらもう全部水に流せるタイプなのかも。でもなぁ。悪口言われたの、つい最近だしな。いきなり忘れろって言われても……。俺が元凶なのにこんなこと思うの間違ってるかもしれないけど。
そんなことが頭を巡り、面接を受ける心境ではなかった。それは本当だ。正直バイトすることをやめてしまおうかと考えたくらいだ。
しかし、気を紛らわせるために何かをしたかったのも本当で今に至る。
隠してきた当時の心境。アオイに見抜かれ動揺したが、認めてしまったらイクトへのわだかまりが取り返しのつかないくらい膨らんでしまいそうだった。それだけはいけない。
また前みたいに、イクトと仲良くしたい。そう思ってきただろ。揺れるな!
平気なフリで心に蓋をし、マサは強がりを言った。
「別に普通でしたよー。むしろ元気しかないっていうか。あの時はたまたま寝不足だっただけで」
「そうなの? でも無理しなくていいよ。私の前では」
「なんですかそれー」
「店長ですからっ」
おどけて、アオイはわざと胸を張る。
「バイトの子が元気でいてくれるように努めるのが私の役目だからさ」