秘め恋

 アオイの旦那について色々訊いてみたくなったが、さすがに踏み込み過ぎかと思いやめておいた。

 店長がどんな男と結婚してようが俺には関係ないよな。うん。うっかり変なこと訊かなくてよかったー。

 話はいったん終わり。アオイは爽やかに言った。

「これからも何かあれば一人で悩まず相談してね。力になるから」

「ホントですか?」

「もちろん。遠慮なく言ってね」

 そんなのは社交辞令かもしれない。話の流れ上、店長として義務感で言ったのかもしれない。

 心から出た優しさだとしても、自分だけでなくバイト全員に似たようなことを言っていたりするのだろう。マサはそう思った。

 ただ、今のマサにとってアオイの言葉は最も求めていた言葉で、現状その言葉にすがりたいのは本当だった。

 イクトに誘われた海でのダブルデート。連れて行く女性がいない今、アオイが適任という気がした。

 アオイは既婚者なので彼女のフリをしてほしいなどとはさすがに頼めないが、バイト先の店長として来てもらえばいい。歳も近くて見た目も可愛い部類だし、今なら少しだけアオイの性格を知っている。

 アオイに付き合ってもらえばイクトやイクトの彼女にいい格好ができるし、カップルデートについていって一人間抜けに恥をかかずにすむ。
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