秘め恋

 海水浴の誘いに乗ったのもそう。本来なら自分の立場を考えうまく断るべき案件なのに、マサへの特別な感情が先行してオーケーしてしまった。

 店長として彼の役に立ちたい、それは本当だ。他のバイトが困っていたら同じように親身になっただろう。

 反面、店長だから彼を助けたいという自分のセリフが言い訳にしかなっていない気もする。というのも、浮上しすぎと言うくらい明るくなっていく自分の気持ちに気付いたからだ。

 こんなにワクワクしたのはいつぶりだろう。

 マサとの海水浴に備え、アオイは水着を買いにショッピングモールを訪れていた。彼に宣言した通り、一人マイカーを走らせここにやって来た。

 へえ。今はこういうのが流行ってるんだ。

 女性ファッション全体に言えることだが、デザインは年々洗練されていき、流行りも目まぐるしく移り変わっていく。自分が十代後半の頃の流行とはまるで違う色とりどりの水着が並んだ売り場にやや気後れした。

 可愛いものから綺麗なもの。目にするどれもが美しい。もちろん趣味に合わないものもあったが、全体的にセンスが良くデザインには文句の付けようがない。サイズ的にはどれを着てもそれなりに決まるのだろう。

 しかし、どれも自分には合わないのではないかと思え切なくなる。独身時代には膨れ上がるほど湧き溢れていた冒険心が、結婚してからはシュンと抑制されていくのを感じる。

 今もそう。なぜか独身時代のような気楽さで新たなことに挑戦できなくなっている。

 こんな水着着ていったら、さすがにマサも引くよね……?

 年下男子の前で肌を見せるのが恥ずかしいと思ってしまう。こんな気持ちになってしまう自分に、アオイは既婚の事実を痛感する。
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