秘め恋

 二十歳を過ぎてから海水浴などほとんどしたことがない。だからだろうか。とはいえ、子供の頃は学校の授業でプールにも入っていたし、男子も大勢いるプールで平気な顔して泳いでいた。海水浴も全くの未経験というわけではない。

 何をためらうことがあるのか。

 出産は未経験だし、独身の時から体重も体型も変わっていない。二十歳を過ぎてから多少揺らぎを感じたものの、肌質そのものは十代の頃とさほど変わらない。

 しかし、マサやマサの親友カップルが一緒だとなれば話は別。どうしたって妙な自意識を抱いてしまう。

 多分、当日はメンバーの中で私が一番年上なんだろうし……。結婚してるのも私だけだよね。変に可愛すぎる水着着ていったら浮くかも。そんなの恥ずかしいし、かえってマサに迷惑かけるよね。

 こちらがマサを気にかけている一方で、彼には初対面の頃から嫌われているような気がしていた。

 表面上はバイトの一員として普通に接してくれたが、彼の視線や仕草の節々に幾度となくこちらへの嫌悪感がちらついていた。

 その理由がアオイには分からなかった。知らない間に彼を傷つけるようなことをしてしまったのなら謝りたいと思うものの決定的な質問をするのもはばかられて、結局様子を見ることしかできなかった。

 そんな時、ひょんなことから互いの恋愛遍歴を打ち明け合う流れになり、少しだけ距離が近くなった。それを機に心なしかマサの対応も柔らかくなったので、以前の彼が放っていた嫌悪感については忘れる努力をしようと決めた。

 店長としてマサの力になりたい。それは本当だが、それ以上の気持ちも正直あった。

 元々マサには惹きつけられる何かがあったが、彼の恋愛話を聞いてからはよりいっそう彼に対する個人的な関心が湧いた。仕事から離れた部分で仲良くなりたいと思った。いわゆる友達という関係。
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