秘め恋

 これまでの経験や周りの人間関係を見てきて思う。異性間の友情は成立しにくい。

 それは分かっているのだが、マサと話していたら、彼となら性別の壁を越えて親しくなれるような予感がした。

 アオイにとって、非難されるべき過去の恋愛経験をすんなり受け入れてくれたマサの存在は大きかった。

 バイト先の店長とはいえ、普通こんな女嫌がるよね。男の子ならなおさら引きそう。なのにマサは引かなかった。サラッとした反応が彼らしい。嬉しかったな……。

 そういう相手となら、互いの価値観を尊重しあい友情を深められるのではないかと思った。

 マサは大学生で、容姿もかっこよく、男性特有のギラギラした視線もなく、雰囲気からして女性にモテそうだ。彼はたまに女性グループの客から熱い視線を浴びている。

 アイドルや人気俳優を見かけた時のような眼差しを客達から受けていることを、本人は気付いていないのだろうか。がっついたり喜ぶ様子もなくひょうひょうと接客している。そこがまた、女性心を適度に刺激するのかもしれない。

 実際彼には、親友の彼女と寝てしまった過去がある。マサに魅力がなければそんなことは起きないだろうとアオイは思った。

 マサはどう考えているか知らないが、彼の憂鬱の材料となっている〝親友の元彼女〟はマサに特別な感情を抱いていたに違いない。
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