秘め恋
最近のアオイは旦那との会話が少ないことで悩んでいた。仁以外の人のことでそんなにも気持ちが浮き上がることが、はたして正しいのかどうか。しかし本人は友情だと断言している。実際そうなのかもしれない。
それに、悩んで気落ちしていることに比べたら、元気そうに見える今のアオイの方がいい。少し引っかかりを覚えつつも、真琴はアオイを信じ深く掘り下げないようにした。
『どんな子なんだろ。私も仲良くできるといいなー』
「大丈夫だよ。その子誰に対しても平等な感じだから。働く時にまた紹介するね」
『ありがとね、仕事のこと。また後で色々話そ』
それから二人は電話を切り、真琴の勧めるバーで待ち合わせ、夕方から飲む流れとなった。
バーには二十代の若者もいたが中年以降の客が多く、裏通りの目立たない場所にひっそり位置しているにも関わらず客足が途切れなかった。
それを見たアオイは、またもや自分の店と比べてしまった。一杯目のカクテルを飲み干すなり、うなだれる。
「ここにあってうちのカフェにないものは何だろう? あーもーっ、今より店を良くできないなんて店長失格だあーっ」
「おいおい、もう酔ったのー!? 早いよー店長っ」
冗談交じりに、真琴はアオイをなだめた。
「ここはそういう年齢層対象にしてるから当たり前。アオイんとこの店はできたばかりとは思えないほど繁盛してる。新しい物好きな若者の心をつかんで離さない証拠でしょー。充分すごいって」
「ありがとね。でも、親に啖呵切った手前、もっと頑張らなきゃって思うんだ……」
「そういうこと仁君にももっと相談してみたら? 夫婦なんだし、一緒に考えてもらえばアオイも安心じゃないかな」
「そうしたいのは山々だけど、やっぱできないよ。うちの親のせいで仁の人生決めつけちゃってるし……」