秘め恋

 この女性店長、マサより五つも年上の二十三歳で立派な社会人なのだが、どうにもそこまで年が離れているとも思えない面立ちで、店長という肩書きにも違和感があるほど注意の仕方も怖くない。

 向こうもそれを自覚しているのか、自分より年下のバイト達をこうして呼び捨てにしたりちゃん付けにしている。暗に年上アピールをしているのだろうか。それらの要素が他のアルバイターにはウケているようだが、逆にそれがマサの苦手意識につながっているのだろうか。

 こんな優しい女いるわけがない、絶対裏がある、こういう女は何を企んでいるのか分からない、と、たいした理由もなく心の底で疑ってしまっているのだろうか。

 もしかして、俺、めちゃくちゃひねくれてる?

 これでも一応、アオイはマサを雇ってくれた面接官でもある。決してなめているわけではないが、威圧感がなく学生のような爽やかさを身にまとうアオイを前に、マサは苦手意識を持ちつつもつい素の自分を出してしまうのだった。だからよけいタチが悪いと思ってしまう。

「恨まれるようなことしたのー? マサは」

「聞いてたんすか!?」

「だって、独り言にしては声大きかったから。そばにお客様がいる時もあるから気をつけてね」

「はーい。今後は気をつけまーす」

 従業員と店長の軽いやり取り。

 少し年の離れた姉といった感じだろうか。マサにとってアオイはそういう存在だった。細身でマサより低い身長。ショートヘアの髪。

 彼女はすでに結婚しているらしいが所帯染みた雰囲気もなく、かといって学生のような身軽な口調でもない。対面していても、友達と話す時の気楽さとはまた別の感覚がする。姉という例え方も微妙に違うのかもしれない。
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