秘め恋
私より断然人間らしいよ。マサは。
仁とアオイの関係をよく知る真琴は、アオイの思考を読みつつ何も言わなかった。
真琴は外見こそグラマラスで長い髪をしており顔立ちにも独特の色気があるが、内面はサバサバしており、友人からは男前だと評価されている。もちろんいい意味でだ。
女性的な共感を示しつつ、適度に見守る男性的な性質も持ち合わせている。ゆえに、アオイの恋愛や結婚を曇りない目で応援してきた。アオイもそれが分かっているので真琴に感謝している。
アオイと真琴。二人は心置きなく何でも話せる間柄であった。
ほろ酔い加減。過去と今が頭の中で交差する。
アオイはポツポツと話した。
「この店、いいね。料理もおいしい。真琴の歓迎会ここにしようか」
「嬉しいけど、未成年のバイトもいるんだしバーは悪いよ。それに、そういうの別にいいから」
「そっか。それもそうだよね」
真琴の口から未成年のバイトと聞いて、アオイは無意識にマサの顔を思い浮かべた。マサの他にも未成年のアルバイターはいるのに。
たしかに、十八の子をバーに連れていくのはまずいよね。
「あれ? さっきから何か鳴ってない?」
真琴はアオイの座席辺りに視線をやった。音の正体はアオイのカバンにしまわれている彼女のスマートフォンだった。
着信が来ている。発信者の名前を見て、アオイは凍りつくような心持ちになった。
「電話だ。着信履歴、玲奈から……」