秘め恋

「電話なんて珍しいね。どうしたの?」

『最近、全然会ってないでしょ? だから、元気にしてるかなーって』

「うん、元気だよ」

 頭痛が始まった。

 漠然とした何かがはっきりとした不安要素に形を変えアオイの腹に重く居座る。

 玲奈の声が嬉々としたままなのも嫌な感覚を増長させる。

『そっか。ならいいんだけど』

「わざわざそれだけのために……?」

 その程度の質問ならラインでいいじゃないかと言いたくなった。

 電話越しに身構え緊張してしまう今から逃げたい。

『ううん。実はアオイに報告したいことがあって』

 もったいぶった間を置き、玲奈は告げた。

『好きな人ができたの』

「え……?」

『アオイ、仁のことで私に遠慮してたでしょ? 気付いてたよ。だからもう本当に気にしなくていいよって言いたくて。色々あったけど、私は今とても幸せだから、アオイも気にせず仁と仲良くしてよ。ね?』

「そうなんだね。分かったよ……。わざわざ電話くれてありがとう。今までごめんね」

 アオイの胸は安堵と疑念の音で埋め尽くされていた。

 本当に好きな人ができたの? 仁のこと、忘れられたの? なぜわざわざ電話で報告なの?

 色んな思いが頭に浮かんでは消え、また浮かぶ。
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