秘め恋
満足と不満足

 イクトによって強引に取り決められた海イベント。

 マサは車を運転し、バイト先のカフェの駐車場までアオイを迎えに行った。

 待ち合わせの時間や場所は勤務時間中に決めた。アオイのラインやメールアドレスなど知らなかったし、訊こうと思えばできたが、そこまで聞き出すほどの仲ではないのでためらった。

 アオイは履歴書を持っているのでマサの連絡先を知っているに違いないがそういった話をしてこなかったあたり、向こうもまだ完全に打ち解けたつもりではないのだと思う。

 アオイの経営するカフェはマサの自宅アパートから近くアオイの自宅からもすぐの距離だと言うので、自然と待ち合わせ場所にいいという話になった。こういうことでもなければ、店長の自宅がどこにあるのかなんてマサは知らなかっただろう。

 到着するとマサはいったん適当な枠に停車させて車から降り、待っているアオイの元まで小走りした。

「おはようございます。今日は仕事と関係ないことに付き合わせてホントすいません」

 一応相手は店長だ。同行してもらえるのはありがたいが同じくらい申し訳なさも感じる。普段客にそうしているようにマサが軽く頭を下げると、アオイは爽やかに笑って首を横に振った。

「ううん。こちらこそ誘ってくれてありがとう。頼ってもらえてとても嬉しい。色々あると思うけど、なるべくフォローできるように頑張るね」

「助かります。心強いです。じゃあ、行きましょうか。荷物持ちますね」
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