秘め恋

「マサは本当に優しいんだね。そこまで気にしてくれるなんて。ありがとう。あ、お茶持ってきたんだけど飲む? あとお菓子とかも」

「え、いいんですか? ありがとうございます。喉渇いてたんですよ」

 店長こそなんて優しいのだろうとマサは思った。

 ただのバイトと店長。成り行きで行くだけの海水浴。

 なのにこんな状態になってるって知られたら、いくら店長でもドン引きだよな。頼むからもういい匂いさせないで!

 男特有のピンチなど知るよしもないアオイは持ち前の面倒見のよさをフル活用し、持参したペットボトルのお茶やコーヒー、ドライブ中でも汚さず食べられるチョコ菓子などを自分のカバンから取り出そうとした。彼女の荷物は後部席にある。

「じゃあ、一度シートベルト外すね」

 言うなりアオイは素早くシートベルトを外し、両膝を座席に載せる形で後部席に手を伸ばした。ちょうど信号待ちに差し掛かったので、

「やけに重いと思ったら飲み物だったんですね」

 マサは正面の風景から視線を外し、一時的に隣のアオイを確認した。

 だが、確認などやめておけばよかったと後悔した。体勢的にも視界的にもまずいことになっている。後部席の荷物を漁っているアオイの胸が助手席のシートに押し潰される形になり、それは彼女の動きでゆらゆらと丸い重みを変形させた。

 マサは再び心の中で悶絶する。

 店長、なんかエロいよ。ホントカンベンして。これじゃ俺ただの変態だし!
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