秘め恋
途切れることのない彼女の匂いとあいまって、枯渇したはずの性的な感覚を呼び覚ます。
マサの頬は本人の意思とは関係なく赤くなっていった。もちろん男なら当然のことなのだろう。
しかし認めたくなかった。なぜなら、その欲は高校生の頃には知らなかった別の感情まで引き連れてきたからだ。
こんな色気皆無な人を可愛いと思うなんて、やっぱりどうかしてる。
マサにとって、女性のことを心の底から可愛いと感じたのはこの瞬間が初めてだった。
もちろん、今まで付き合った女だって全員可愛いかった。そもそもタイプでなければ手など出さない。それなのに、そういった体験済みの感情とはどうも違う。
初めてさらされた自分の心に、マサは恐怖と不安を覚えた。
「よし、取れた。はい。どうぞ」
アオイは元どおり座席に戻りシートベルトをかけると、マサにペットボトルのお茶を手渡した。
その時、ふと彼女の左手の薬指に指輪が見えた。
結婚指輪……。だよな。この人結婚してるんだった。
あれだけ激しかった身体的反応はサッと収まり、マサはやけに落ち着いた気持ちでアオイから飲み物を受け取った。