秘め恋
アオイから向けられるあたたかいまなざしは、マサが隠した心を全て受け止めてくれそうに思えた。
「ですね……。イクトのは、仲直りと言う名の復讐なんだと思ってます。こっちに彼女いないの分かってて誘ってくるんですから。独り身の俺に恥をかかせたかったんじゃないでしょうか。それだけのことをしたのは分かってるんで、しょうがないんですけど」
「マサ……」
「すいません、こんな話。誰にも言わないつもりだったんですけど……。つい口が滑って」
「いいよ。遠慮しないで。私には。どんどん話して」
「店長……。どんだけいい人なんですか」
「マサ!? 目が潤んでる…! よしよし」
まるで小さい子をあやすようにアオイに頭をなでられ、マサはこっぱずかしい気持ちになった。
「ちょっ、やめて下さいっ! 泣いてませんから」
「でも……」
「エアコンで目が乾燥しただけです」
「そう?」
アオイの手のひらからは彼女の甘い香りとぬくもりが感じられた。
女の人に子供扱いをされて不愉快なのに、それを上回るアオイへの好感が耳まで赤く染めた。不意に触れられた部分が未知の熱を帯び、マサの心には様々な想いが溢れていく。
高校時代に傷ついたこと。イクトへのわだかまり。今回の海イベントの結末がどうなるのか。不安は尽きないが、アオイのおかげで落ち込みすぎずにすんでいるのも本当で。
暗さと明るさ。あらゆる気持ちに胸が張り裂けそうになりつつ、心から感謝の気持ちを伝えた。
「今日、店長に頼んでよかったです。イクトに会うの、思ってたより怖くなくなりました」