秘め恋

 アオイといると、マサは色んな話をしてしまうのだ。元は、女性に対してこんなに自分の話をする方ではなかった。

 歴代彼女達の話を聞くことはあっても自分の話など積極的にした覚えがない。あったとしても相手の質問に答える程度だ。それに不満などなかった。聞き手に徹するのは楽だ。適当に相槌を打っていれば女の子は満足してくれる。

 ただ、自ら話し手になるのも悪くない。アオイとの会話で初めてそう知った。

「店長だからとか、そういう気は遣わず正直な気持ちで返事してほしい。けっこう本気だから」

「本気って、何ですかそれ」

 からかうマサの口調に、内側から優しさが溢れ出る。

 そっか。これは恋じゃなくて友情だ。他の女友達と店長は別格。それだけ。

 未知なる想いに名前を付けて、マサは朗らかに答えた。

「いいですよ。なりましょう。友達」

「ありがとう!」

 そこまで喜ぶかというほど満面の笑みを見せるアオイに、マサの胸は小さく確かに鼓動した。

 それが嬉しくて、なのに照れくさくて、マサは再びアオイをからかった。

「でも、友達になろうって言われてなるの初めてですよ。そういう場合ってたいてい誘った側に裏があるって言いますよね。やばい何かの勧誘とか」

「ひどいっ! 勧誘する気なんか一ミリもないよっ。本当に心から純粋にマサと友情を育みたかったの!」

「くさいですよ、そのセリフ。言ってて恥ずかしくないですか?」

「恥ずかしいよっ! でも言わなきゃ伝わらないしっ」
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