秘め恋
「あはは。すいません。いじめすぎましたね」
「もう! マサがそんな意地悪とは思わなかった! ううん。よく見たらそんな感じかも」
「ちょっと聞き捨てなりませんね。どういう意味ですかそれ」
じゃれあうような会話。気の置けない冗談。それぞれの抱える荷物が軽くなっていくのを、二人は感じていた。
この人といると楽しい。久しぶりに心から笑った気がする。
マサとアオイは、同じタイミングで同じことを思った。互いにそうと知らないままに。
「じゃあ、この瞬間から敬語もナシにしない?」
「その辺別にこだわりないですけど、一応店長は店長だしバイト中はタメ口ってまずくないですか?」
「そうだね。じゃあ、仕事中だけ敬語で他はタメ口にするってどう?」
「分かった」
「切り替え早いっ!」
「ああ、こういうの得意だし」
アオイは面食らったように頬を赤らめ、だけどその表情には次第に満足感が浮かんでいく。
「名前呼びも友達っぽくする? アオイさん」
「さん付けはくすぐったいから呼び捨てでいいよ」
「じゃあ、アオイで」
「やっぱなんか恥ずかしい…!」