秘め恋
約束の海水浴場は近隣住民にも人気があるらしく、どこを見ても人の姿でごった返していた。
マサ達のように遠くからやってくる者も多く駐車場はほぼ埋まっていた。朝早く出てきた甲斐もあり何とか駐車場を確保できたものの砂浜からは遠のいたので、泳ぐ場所までけっこうな距離を歩かなければならない。
マサとアオイはどちらかともなく車内から降りた。外に出た瞬間熱気に当てられ、クーラー慣れしたサラサラの肌は濡れたように汗ばむ。
「すごい人! 潮の匂いもする。海に来たーって感じだね。マサの友達はもう来てるかな?」
「うん。ちょっと前に着いたって」
ラインを確認しマサはそう答えた。この人混みを予想していたのはイクトも同じだった。
イクトと顔を合わせるのはやはり緊張するものの、アオイがついているおかげでマサは平静を保てていた。
ビニールシートやアオイの持ち込んだ菓子類を手に、イクト達が確保した場所へ向かう。
子供の喚き声。大人のはしゃぎ声。潮の香りが広がる熱い砂浜を、人並みを避けて歩く。
マサはアオイをかばいつつ彼女の前を歩いた。
この人目を離したら人波に流されてっちゃいそうだし。何となくだけど。