秘め恋
触る気はなかったのに、不意にマサの指先がアオイの肌をかする。
「ごめん。かすった」
「ううん。それはいいけど、でも、これいいの? 着てたら砂で汚れるかもしれないよ」
アオイは肩にかけられた上着が汚れる心配をしたが、マサにとってはそんなことどうでもよかった。
少しでも彼女の肌を他の男の目から隠せるのなら。
友達の分際でそんな思いを告げていいわけがないので、適当に理由を付け足す。
「汚してもいいよ。洗えばすむし、帰りは車に積んである服適当に着てくから。それUV効果ある布使ってるらしいし、日焼け予防にもなってちょうどいいんじゃない?」
「ありがとう! 嬉しい!」
クロスさせた両手の指先で肩にかかる上着の裾をちょこんと掴む、アオイの仕草と満面の笑みがたまらない。マサはまたもや胸の高鳴りを感じた。
純粋な気持ちの一方、視覚的にはまずいことになっている。細い腕のちょうど真上に胸の谷間がしっかり見えた。
バイト中にはあまり意識していなかったが、思っていたよりアオイの胸は大きい。どこからどう見ても豊満な胸の持ち主であるユミに比べればアオイのそれは小さいのかもしれないが、そのサイズ感がちょうどよかったし可愛いと思えた。
「実は日焼けに弱いんだ、私……。高校の頃、背中の皮とかベリベリにめくれて」
「マジか! 海なんて来てる場合じゃないでしょそれ!」
無理させてしまった申し訳なさと、アオイのボディラインに女を感じてしまった後ろめたさで、マサは過剰反応してしまった。
しかし当のアオイは太陽光をさして気にしておらず、むしろ嬉しそうに目を輝かせていた。
「ふっふっふっ。大丈夫。これがあれば!」
ビニールシートに置いた自分のカバンを探るなりまるで通信販売のテレビで商品を紹介する人間のような身振りで、アオイは茶色い錠剤を取り出した。
サプリメントなのだろうか。持参したお茶でそれを二粒飲む。
「何その怪しげな物は」
「飲む日焼け止めだよ。あとはコレ!」
アオイがマサの眼前に突き出したのは、マサもよく知る一般的な日焼け止めである。ドラッグストアやコスメショップでおなじみのよくあるクリーム状の物だ。