秘め恋

 彼女の指先が柔らかそうな肌を滑るたび、この手で触った時の感触を想像し、マサの体は熱を帯びた。砂浜を照らす灼熱の太陽ですらその熱は消せない。

 アオイを映すマサの目の奥に、体感したことのない感情が溢れてきた。性的なものに限りなく近いのにそれとは違う何か……。

 ぼんやりアオイを見つめていると、彼女はおずおずと上目遣いでマサを見た。

「マサ、お願いがあるんだけど……」

 アオイは言いにくそうに視線を左右させ、最後は助けを求めるようにユミを見つめた。

 ユミはイクトに日焼け止めを塗ってもらっている最中だ。さっきは背中だったのに、今はビニールシートにうつぶせの体勢で太ももの裏にまで塗ってもらっている。マサにとってはなかなかに扇情的で、アオイに同じことをしている自分を想像してしまうのに充分なシーンだった。

 とはいえ、実際そうするかどうかは別である。

 アオイの頼み事を読み取り、マサは真っ先に断り文句を口にした。

「もしかして、それ塗ってほしいとか? はっきり言って下手だよ俺」

「そんなことないよ。マサは器用だもん。だからお願い! 背中と太ももだけでいいからっ」

 「だけ」って! かなり際どい部分なんですけど!?

 思わず口に出してツッコミを入れてしまいそうになった。

 寸前で何とか言いとどまったが、アオイの申し出にマサの心臓はいよいよ激しく鼓動しはじめ、その動揺はそう簡単には収まりそうになかった。

「せっかく来たし、日焼けを気にせず楽しみたいんだ」

 日焼け止めの容器を両手でガッチリ掴んで祈るように懇願してくるアオイを前に、マサの意思はあっさり崩壊した。

「そんなこと言われたら断れないよ。誘ったのこっちだし……」
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