秘め恋

 友達らしく。健全な思考を。そう。マサは親切でこうしてくれてるんだ。うん。それ以外の意味はないっ。

 強く自分に言い聞かせることで妙な考えを追い払ってみても、やはりマサの手のひらの動きに過敏になってしまい胸が熱くなる。こうなってしまうのは、マサとの間に起きたそれまでの出来事も大きかった。車での親切。時折見せる切ない表情。砂浜で上着を貸してくれたこと。女性として大切に扱われている。そんな気がした。

 マサにそんな気はないよ。もともと優しい子。それだけ。それだけ、なんだよ。

 長いようで短い日焼け止め塗りの時間は終わり、マサはアオイに日焼け止めクリームを返した。

「こんなんでいい?」

「ありがとう。助かった。ごめんね、変なこと頼んで」

「別に。塗らなきゃやばいでしょ」

「だね。あはは」

 アオイはぎこちなく答えた。というのも、マサの様子がいつもと違う気がするからだ。声音はそっけないのに、目つきがいつになく優しく熱っぽい。異性特有のまなざしに触れた気がして胸が高鳴る。

 何考えてるの!? ありえない。マサは友達でしょ!

 一生懸命自分に言い聞かせた。自分はとんでもなく恋愛経験値が低い。だから、マサにとっては普通の視線を特別なものと勘違いしてしまっているだけだ。そうに決まっている。それに、優しい視線なら旦那にも向けられている。マサの視線は仕事仲間の情からくる優しさ。それだけだ。そうに違いない。
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