秘め恋
それからアオイとマサはイクトとユミに合流した。他の海水浴客を避けるようにし四人でビニールボートに乗ったり、イクトの持参したシュノーケルでそれぞれに素潜りを楽しんだりした。
そうしていれば恋めいた感情も薄れて単なる気の迷いで終わるとアオイは思っていたのに、マサに対するときめきの意識は強まる一方だった。遊びの合間に、マサはアオイの日焼けを気にかけた。アオイ本人ですら楽しむことに夢中で忘れていたというのに。
「そろそろ塗り直した方がいいんじゃない?」
「そうだね、けっこう泳いだもんね」
素潜り用のシュノーケルを外し、アオイはマサを見た。日焼け止めを一切塗っていなかったマサは数時間の遊泳でけっこう焼けていた。彼の二の腕や胸に視線をやってしまい、アオイは思わず目をそらした。
二人のやり取りを聞いていたユミがそろそろ昼食にしようと言ったので、昼休憩を兼ねて女子陣の日焼け止めを塗り直す流れになった。四人で場所取りした砂浜に戻り軽くタオルで体を拭いたりし、海の簡易食堂へ向かう。店内は混んでいたが、何とか四人分の席を確保できた。
四人が着いたのは出入口に近い四人用テーブルだったが机も椅子も規定のサイズより小さく、座ると隣同士で肩が触れ合うほど狭く感じた。それをいいことにカップルのユミとイクトは互いの頭を撫であったりなどしてイチャついているが、友人の域を出ないアオイとマサはその距離感にどぎまぎした。
「ごめん、また肘ぶつかった」
「仕方ないよ。マサ、もっとこっち来れば?」
海で遊んでいるうちに、二人は朝より打ち解けた。それでも最低減の遠慮というものはあるらしく、マサはアオイに気を遣って椅子の隅ギリギリのところに座っていた。