秘め恋
「マサ、何かワケがあったんでしょ? じゃなきゃ、二股なんてかけないよね?」
尋ねる声が震えてしまう。マサを助ける友達だと言うのならもっとどっしり構えていたいのに、イクトの攻撃の余波はアオイにも思いのほか大きなダメージを与えたのだった。
お願いマサ。否定して! ううん。納得できる理由を聞かせてくれたら私は大丈夫だから。
アオイの心の声はマサに届かなかった。ゆっくり席を立つと、マサは諦めとも悲しみとも取れる表情でアオイを見下ろした。
「言い訳なんてしない。イクトの言う通りだから」
そう言い残し、マサは海の家を駆け出した。
「マサ……!」
アオイも席を立ちマサを追おうとしたが、ユミに止められた。
「今は一人にした方がいいんじゃない?」
「でも……」
「彼女にそんな話されたら男でもきついと思うよ。気持ちの整理する時間がいるよ。アオイちゃんもさ」
「そうだよね……」
ユミの言うことは最もだった。
アオイはマサのことが分からなくなった。そして同時に自分の気持ちも。なぜ、マサの女性遍歴にここまで動揺してしまうのだろう。相手が仁ならともかく、友人でしかないはずのマサに。彼に並々ならぬ好感を抱いていたからだろうか。
さっきまではあんなに楽しかったのに。私も、マサも。