秘め恋
「おお。気をつけてなー」
あっさりユミを見送るイクトに、アオイは少々疑問を覚えた。ここは男性も多い。あんなに魅力的な彼女を一人で出歩かせてナンパが心配にはならないのだろうか。
「ついてってあげなくていいの?」
「大丈夫。アイツ気強いから。変な男来たって平気平気」
「そうなんだ……」
イクトの様子を見て、ユミの言葉を思い出した。
『アオイちゃんってイクトの好みっぽーい』
本当に二人がうまくいっていれば、ユミからあんな言葉は出てこないはずだ。イクトに思われている確たる自信がないから、彼女はあんな風に疑心暗鬼な発言をしてしまうのではないだろうか。今トイレでここから立ち去ったのも、自分と仲良くしているイクトにモヤモヤしてのことかもしれない。
かといって部外者の自分がどこまで首を突っ込んでいいのか分からない。さりげなく、そして皆にとってよかれと思うことを、アオイは伝えることにした。
「ねえイクト君。余計な口出しだったらごめんね」
「大丈夫。アオイちゃんの言葉なら聞くよ」
「じゃあ、遠慮なく。マサにこだわるとユミちゃんを寂しくさせるんじゃないかな? それって元カノさんを忘れてないって言ってるようなものだから」
「そうだね。俺もそれは分かってる。いや、分かってるつもりでいるだけかもなー……」