秘め恋
決まり悪そうに、イクトは片手で髪の毛を混ぜる。
「元カノへの未練はもうないよ。でも、それ以上に、マサに裏切られたことへのショックが大きくて。アイツ女の子から見たら最低なとこばかりだけど、友達としてはいいヤツなんだ。元カノ絡みで揉めるまで、本当に最高の親友だと思ってた。でも、アイツは簡単に俺を裏切った。それがどうしようもなくきつかったんだよ。アイツにとっての俺はしょせんその程度の友達だったのかなって」
イクトの言葉に嘘はないように思えた。素直さがあるし、マサに向けていた攻撃の理由にも繋がっている。
「でも、それでユミを不安にさせてたらダメだよな。アオイちゃんの言う通りだよ。でも、気持ちが整理できなくてグッチャグチャで。俺だっていつまでもこんな風でいるのは嫌なのに」
「マサも同じだよ。イクト君のこと大切って思う分苦しんでると思う」
「ありがとう、アオイちゃん。聞いてもらったら、なんかちょっと楽になった」
「本当? それならいいけど」
イクトの表情に陽気さが戻る。アオイもホッと胸を撫で下ろした。話が途切れたので、それぞれの食べたい物とユミに頼まれた物を注文した。マサが戻ってきそうにないことが気がかりだが、とりあえず昼食をすませてから彼を迎えに行こうという話にまとまった。その頃になれば互いに冷静さも戻り、落ち着いて話せるはずだから。
「ねえ、アオイちゃん。ライン教えてよ。これからもたまに相談に乗ってほしいし」
「それはダメだよ。ユミちゃんに悪い」
「大丈夫。それに、アイツにこういう相談すると余計な不安与えちゃうでしょ? さっきアオイちゃんに言われて気付いたんだけどね」
「それはそうかもしれないけど……」
いまだに戻ってきそうにないユミのことが突然気になった。アオイは落ち着かない気持ちになる。