あの日みた月を君も
「ソウスケ?」

髪を下ろしたその女性は大きく目を見開いて僕に言った。

「アユミ?」

僕はアユミらしい女性の目を食い入るように見つめた。

その顔は、僕の知ってるアユミとかなり違っていた。

もっと丸顔だったし、頬はいつもピンクだった。

なのに、目の前にいるアユミは目だけが異様に大きく、頬は痩せ、顔色も悪かった。

「ソウスケなのね?」

でも、その声は紛れもなくアユミだった。

どうして、こんなにも変わってしまったのか。

その細く華奢な体は、誰かが支えていなければ、崩れ落ちそうなほどだった。

「驚いた?変わったでしよ。8年も経っちゃったものね」

アユミは僕から顔を背けるかのようにうつむいて笑った。

頬にできたえくぼはあの時のままで少しホッとする。

・・・アユミは変わらないよ

そう言いたかったのに、言葉が出てこなかった。

「あなたは昔から嘘が下手ね。大丈夫よ。私も自分がどれだけ変わっちゃったかってよくわかってるから。」

そう言うと、寂しそうな目で僕を見上げた。

僕はなんて情けないんだ。

あんなにも会いたかったアユミ、愛しいアユミと会えたというのに。

あまりにも痛々しく変わってしまったアユミにショックを受けていた。

「元気か?随分疲れているように見えるけど。」

そういうのが精一杯だった。

「そうね。夜勤の仕事も多いし、病院はかなりの激務で、元気とは言えないかも。」

アユミは僕から視線を外して言った。



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