あの日みた月を君も
9.カスミとヒロと私
9.カスミとヒロと私


「なんかさー、やっぱそのカスミって子、私はいけ好かないわ。」

ショウコは電話の向こうで腹立たしそうに言った。

「そう?でもま、好きなんだからしょうがないんじゃない?」

「だけどさ、その天体観測部だって、元々はリョウだけが誘われてるわけで、わざわざ親切心でもってカスミって子に声かけてあげたんでしょう?普通、そんな友達に対して席外してなんて言わなくない?」

「友達って思ってないのかもね。」

一瞬ショウコの息づかいが止まった。

「リョウはやけに冷静よね。」

「だって、カスミはショウコとは全く違うもの。私も友達っていう感覚があまりないわ。だけど、それなりに仲良くしてくれてるから一緒にいる時間が多いだけっていうか。放課後一緒に帰ったことも、一緒にカフェに入ったこともないもん。」

「まじで。」

「うん。ショウコは高校で新しい友達はできた?」

「ま、まぁ少しはね。」

ショウコが少し遠慮がちに言うのがわかった。

普通はショウコが当たり前で、新しい場所に飛び込んだならそこで新しい友達ができるもの。

それなのに、そんなショウコに少し嫉妬している自分がいた。

「いいな。ショウコは。」

私なんて、知らない人ばっかの高校で、偏差値だけやけに高いけど、心底一緒に笑えるような友達にはまだ出会ってない。

友達って何だろ?

「その、大山ヒロって子は、友達じゃないの?」

ヒロ??

思いもしない名前が飛びだして、思わず胸がドキンとする。
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