あの日みた月を君も
「付き合ってない?んなわけないだろ。いつだって一緒にいるじゃないか。」

マサキは僕に顔を近づけて、周りを気にしながら言った。

「帰り道が同じなだけだよ。」

「でも、いつも二人は楽しそうだ。」

マサキは食い下がる。

そんな真剣なマサキの顔を見ていたら急に愉快な気持ちになって、思わず吹き出した。

「アユミちゃんのこと好きなんだろ?」

「嫌いじゃないよ。」

「嫌いじゃない?嫌いじゃないっていうのは好きだってことと同じだ。」

「そんなことないだろ。好きっていう可能性を多少秘めた言葉だよ。」

「あー、ソウスケはいつも面倒臭い言い方をするよな。俺には何でも言ってくれよ。親友だろ?」

そういうマサキの方が面相臭い奴だと思うが、憎めないいい奴だったから今まで親友でいられた。

「好きだよ。」

小さい声で言った。

マサキは大きく目を見開いて僕の方を見つめた。

「やっぱり。」

「だからどうなんだ?」

僕はそんな表情豊かで明るいマサキといると、いつも癒される。

自然と笑顔になる自分が不思議だった。

「ちゃんと自分の気持ちを伝えたのか?」

マサキの頬が心なしか紅潮している。

どうしてお前が赤くなるんだって突っ込みそうになる。

「まだだよ。」

「じゃ、卒業までには告白するんだな?」

「それはわからない。」

「なんだよ、それ。」

「俺が告白しようとしまいとマサキには関係ないことだろうが。」

「だってさ、お前はこれから夢に向かって邁進していくんだろ?そのためには心の支えってものが必要じゃないか。」

僕は笑って立ち上がる。

「さてと、研究室に戻るから、お先に。」

「おいおい。」

マサキが困ったような顔で僕を見上げた。

こういうことは、そんな簡単な話ではなかった。

とりわけ、僕とアユミとの間では。




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