あの日みた月を君も
ショウコに話した翌日。

早速シナリオが配られる。

主 役:アイ・・・峰岸キョウコ
相手役:ショウタ・・・大石ヒロ
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片思い役:ヒロミ・・・佐久間リョウ
片思い役の友達:トモコ・・・近藤カスミ


か、片思い役?私が?

目にした途端、ぞっとして鳥肌が立った。

誰に片思いの役よ。

だって、この中に思われ人らしき人物って、やっぱり相手役のヒロくらいしかいないじゃん!

脇役にしてくれって頼んだのに、主人公の相手役に片思いする人間ってそれなりのポジションじゃない??!

思わず頭を抱えてうなだれた。

「どうしたの?」

カスミが後ろから肩を叩いてきた。

思わずギロリとカスミの方をにらむ。

そもそも、カスミが私の名前を出さなければこんな辱めをうけることはなかったのよ。

しかも、カスミの方が片思い役の友達だなんて目立たない存在じゃない!

「あのさ。」

もう一度カスミの方を向いて言った。

「よかったら、なんだけど、私の役と交代してもらえないかな。」

「え?」

「ちょっとさ、やっぱりこういうのめちゃ苦手で。片思い役なんて私できないわ。」

「いいの?きっと私の役よりずっといい役だと思うけど。」

「ぜんっぜんいい!先生にお願いしてもいい?私とカスミと交代したいって。」

「私は構わないけど。」

私はすぐに席を立って先生の前に歩み出た。

「カスミの役と交代させて下さい。カスミにも了承済みなんで。」

椅子に座ってテストの採点をしていた先生が顔を上げた。

「僕は一向に構わないけど。佐久間さんと近藤さんがそれでよければ。」

これでよし!

・・・だけど。

ちゃんとシナリオを読まなかった私も悪かったわけで。

家でシナリオを最初から最後まで読んで発狂することになろうとは。




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