あの日みた月を君も
T市は、大きな町だけれど、今日は平日とだけあってか比較的人の波は少なく感じられた。

映画館への道のりも、あっけなく感じられるほどにすぐに着いた。

「あ、これ前から観たかったの。」

映画館では2本上映されていて、そのうちのアメリカで制作された映画をアユミは指刺して言った。

明らかに恋愛物だろうか。

美しい外国人の男女が2人見つめ合ってるポスターが掲げられている。

僕はあまり恋愛物は観たことがなかったけれど、アユミとなら、まぁいいかと思い、

「これにしよう。」

と言った。

「いいの?」

アユミは僕の顔をのぞき込む。

「いいさ。特にこれが観たかったっていう映画もないし。アユミのセンスも拝見できるだろ。」

「私のセンス?なんだか恥ずかしいわ。」

アユミは頬を染めて笑った。

映画の時間を確認すると、まだ1時間ほど余裕がある。

「どうする?」

映画館の周りを見回しながらアユミに尋ねた。

近くに喫茶店でもあればいいんだけど。

「あの商店街の中に喫茶店があるの。そこで時間つぶさない?」

アユミは映画館の横に長く伸びている商店街を観て言った。

「そうしようか。」

よかった。

こんな街中でウロウロしていても疲れるだけだと思っていた。

僕らは、商店街の奥にある喫茶店に向かった。


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