あの日みた月を君も
喫茶店で、僕はコーヒーを頼んだ。

アユミはメロンソーダ-を頼む。

「メロンソーダ-?子供みたいだな。」

アユミが頼んだ後、思わず言ってみた。

「いいの。だって、おいしいんだもの。それに、すごく色がきれいでしょ?」

運ばれてきたメロンソーダ-を嬉しそうに飲んだ。

アユミの子供っぽいところは意外でもあり、かわいらしくも思う。

でも、こうやってゆっくり外出しないとそんなアユミのことも知らないままだったのかもしれない。

どうして、アユミは僕と思い出を作りたいって思ったんだろう。

どうせ卒業したら離ればなれになり、しかもアユミは結婚するかもしれない身なのに。

僕はアユミが好きだから、とても喜ばしいお誘いだったけれど、アユミにとって今日っていう日はこれから先の人生にどう映り続けるんだ?

それとも、もう結婚しないかもしれない?

コーヒーをすすりながら、ふとそんなことを思った。

結婚しないなら、まだしばらくはアユミと一緒にいられるのか?

だけど、アユミは生粋のお嬢様だから、僕なんかと不釣り合いで、きっと結婚までは許されないわけだし。

付き合ったとしてもその先には結婚はないんだろう。

アユミが楽しそうにメロンソーダ-を飲んでる。

こんな風に一緒に向かい合って喫茶店に座るのも最初で最後ってことか。

結局はそこに行き着いて、アユミに気づかれないように軽く息を吐いた。

「アユミは卒業したらすぐに結婚するの?」

こういうことは、尾を引かないようにきちんと聞いておかないといけない。

僕は思いきってアユミに尋ねた。



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